翻訳家によるコラム:生物学・分子生物学・バイオ技術コラム

生物学・分子生物学・バイオ技術コラム by平井
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2012年06月26日
舌癌の中に直接セシウム針を刺入する小線源治療

こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。

分子生物学やバイオテクノロジーをはじめとする生物学全般に関する翻訳や、医学論文、生化学、ライフサイエンスに関する翻訳など、生物学や医学において、複数の分野にまたがる翻訳も扱っています。指名でのご依頼もお受けしておりますのでご相談ください。

放射線治療(radiation therapy)には線源(radiation source)を癌病巣(cancer lesion)の中に直接挿入したり、あるいは特殊な容器の中に入れて癌に押し当て照射したりする方法があります。この方法は小線源治療(brachytherapy)と呼ばれ、その歴史は古く100年以上前から行われており、放射線治療はこの小線源治療から開始されたといえるでしょう。外部照射法に比べると、その適応になる癌の種類が限られるものの、放射線治療の一つの柱になっています。

放射線治療は癌病巣に直接、放射線を当てることができるので、それだけ効果が高く、口の中の癌や、子宮頸癌などの治療にはなくてはならない治療法です。他にも早期の食道癌(esophageal cancer)、気管支(bronchial tube)に限局する早期肺癌にも用いられます。

舌癌(tongue cancer)に対するセシウム針(cesium needle)治療では局所麻酔(local anesthesia)で15分程度の手術で終了しますが、放射線が漏れない特殊な部屋に約1週間入院する必要があります。一方、子宮頸癌に対する治療法は1回当たりの治療が約1時間であり、外来での治療が可能です。その上、放射線源がリモートコントロールで線源を入れた装置から容器の中に挿入されるため、コンピューターで最適な治療が計画されます。

最近では増加が著しい前立腺癌の治療にも用いられています。ヨウ素125と呼ばれる線源を用い、特殊な装置が必要ですが、従来の手術に比べると入院期間が短く、さらに手術で失われる機能が温存されるのが特徴です。また外部照射法と比べると治療期間の大幅な短縮が可能になります。

このように小線源治療の適応となる癌は限られているものの、ある種の癌の治療にはなくてはならない重要な治療なのです。

轄kエ翻訳事務所   論文翻訳担当:平井