こんにちは。轄kエ翻訳事務所で論文翻訳を担当している平井と申します。
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トリカブト(aconitum)は日本全国の山野に自生する兜形の紫の花が美しい山草で、庭先や鉢植えとしてしばしば植えられています。
トリカブトは世界中で最も多用され、普及している毒草といえるでしょう。ヨーロッパではギリシャ・ローマ神話の時代から登場する毒薬であり、矢毒として使用されてきました。猛毒で知られるインドの「ビシュ」もトリカブトの仲間です。
トリカブトは60〜100センチに達することもあり、葉は互生し深い切れ込みの入った鋸歯をもっています。開花期には、藍〜紫の兜形の独特な形状の花が咲き、それと一目でわかりますが、幼草時期には、代表的な山菜であるセリやモジミガサ、ヨモギ、薬草のゲンショウコに似ているため事故例も多く、症状は嘔吐、舌の麻痺さらに手足などの末梢から麻痺が進行し、やがて口泡、瞳孔散大(dilatation of the pupil)、呼吸麻痺という神経毒に独特の症状を示し、摂取量が多いと死に至ります。
全草に毒を含むトリカブトは、老化や新陳代謝の停滞を改善する漢方薬としても用いられてきましたが、毒性が強いためにその処方が大変難しいことでも知られています。
トリカブトの毒成分は1833年、ガイガーとヘッセによりヨーロッパ産のトリカブトから不純物を含みながらもアルカロイドが抽出され、その植物名からアコニチン(aconitine)と名付けられました。
人体内で神経伝達に関与している重要な化合物に窒素原子をもつ物質がありますが、アルカロイドもこれらと化学的な構造や性質がよく似ており、人体に毒、あるいは薬としての作用が著しいため、昔から科学および医学的に熱心に研究され、アヘン、コカイン、ニコチン、カフェインなど数千種類のアルカロイドが知られています。アルカロイドは、植物が進化の過程で手に入れた、動物に食べられないように身につけた防御用の物質です。
矢毒で捕らえた獲物を食べた人はどうなるのか、また、漢方薬といっても有毒なのでは、という疑問がありますが、主成分のアコニチンは比較的熱に弱いため、十分焼いたり煮たりする、あるいは一時間以上煎じることでその作用はほとんどなくなります。加熱して薬効まで失われないのかについては、附子類の薬効である心機能亢進はアコニチンの毒性とは逆であることから、アコニチン以外の成分によるもののようで、真の薬効成分を求める研究が進められています。
轄kエ翻訳事務所 論文翻訳担当:平井 |